Yojodo Café — Episode 5
Who Will Take Care of Her?
朝から、養生堂は妙だった。
いつもなら開店前には聞こえてくるトントンと野菜を切る音もない。
煎じ場の火も静かだ。
その代わり、 店の真ん中で生姜が騒いでいた。
「だから! 絶対熱あるって言ったじゃん!」
「声が大きい」
芍薬が眉をひそめる。
「病人起きるでしょう」
「いやだって、クコ先生が“平気平気”って言うから!」
「だから無理するタイプなの」
呆れたように芍薬はため息をついた。
昨夜遅く。
閉店後に片づけをしていたクコがふいに手を止めた。
「先生?」
振り返った甘草が声をかける。
「ん? 大丈夫…」
そう笑ったものの、その顔色はあまり良くなかった。
そして今朝。
クコは見事に熱をだした。
「完全に気虚だよぉ……」
大棗は心配そうに台所を覗き込む。
「昨日もちゃんと食べてなかったもん」
「また患者さん優先してたんだろうね」
甘草が静かに薬棚を整えながら言った。
養生堂では珍しく、 全員がそわそわしていた。
クコがいないだけで、 店の空気がどこか落ち着かない。
桂枝などは朝から三回も同じ場所を拭いている。
「桂枝くん、そこもう綺麗」
「えっ」
「二回目までは見逃したけど今、三回目」
「そんなに拭いてた?」
「落ち着きなさい」
芍薬が凛とした声で言う。
けれど桂枝は困ったように笑った。
「いや……なんか静かすぎて」
その言葉に、 みんな少しだけ黙る。
たしかに静かだった。
いつも聞こえる「おはよう」の声がないだけで
養生堂は別の場所みたいになる。
すると奥の襖が少し開いて、 クコが顔を出した。
「みんな……今日はお休み…」
「寝てて!!」
全員の声が揃った。
クコは目を丸くする。
「えぇ……」
「“えぇ”じゃない!」
生姜が叫ぶ。
「先生、自分のことになると雑すぎ!」
「ちゃんと寝ないと治らないよぉ」
大棗も珍しく真剣だ。
クコは困ったように笑う。
「そんな大げさな……」
その瞬間、 ふらっと身体が揺れた。
芍薬が即座に支える。
「はい、戻る」
「……はい」
さすがに観念したのか、 クコは大人しく部屋へ戻っていった。
皆で、クコが布団に入るのを見届けた。
次の瞬間。
「で、誰が看病する?」
大棗の一言で、 養生堂が一気に騒がしくなった。
「俺、行く!」
真っ先に桂枝が手を挙げる。
「熱ある時は温めた方が──」
「暴走しそうだから却下」
芍薬が即答。
「えぇ!?」
「桂枝くん絶対“汗出せば治る!”とか言い出すもん」
「言わないよ!」
「言う」
甘草までもが頷いた。
「じゃあお粥作ろうよ!」
大棗が、ぱっと顔を上げる。
「食べなきゃ元気出ない!」
「……それは賛成」
芍薬も小さく頷いた。
そこからが大変だった。
桂枝は「身体温めるなら生姜多め!」と言い、
芍薬は「弱ってる身体に刺激強すぎ」と止める。
生姜は横から 「え、俺入れるよね!?」 と騒ぐ。
甘草はその様子を静かに何かを考えながら眺めている。
養生堂なのに、 今日はまるで小さな台所戦争状態だった。
やがて、 ことことと優しい音がし始める。
白い湯気。
やわらかい米の匂い。
そこへ、 大棗がいくつもの切り目を入れた大棗を落とした。
「ちょっと甘い方が元気出るもん」
誰も反対しなかった。
しばらくして出来上がったお粥をみんなで部屋へ運ぶ。
「先生、起きてる?」
桂枝がそっと声をかける。
布団の中から、 眠そうな声が返ってきた。
「……なんか賑やかだねぇ」
「お粥できたよぉ」
大棗が嬉しそうに言う。
クコは半分眠ったまま身体を起こした。
湯気を見て、 微笑む。
「わぁ……養生堂の匂いがする」
その一言に、 みんな少しだけホッとした。
クコはひと口お粥を食べる。
「……おいしい」
桂枝がぱっと顔を上げる。
「ほんと!?」
「うん。でもちょっと生姜多い」
「やっぱり桂枝くん入れた!」
「ちょっとだけだよ!?」
「三回入れようとしてた」
「芍薬それ言わなくてよくない!?」
部屋に笑い声が広がる。
「今日は皆で協力してカフェをやります」
「クコ先生は寝ててくださいね」と甘草が真顔で言う。
その言葉に、みんなが力強く頷く。
明日になれば、またいつもの養生堂に戻るだろう。
けれど、今日だけは違う。
クコのいない養生堂で、皆だけの一日が始まろうとしていた。
第五話 ~完~
※現在チャットにて「好きな養生堂のキャラクターは?」
とお聞きしています。
今後のキャラクター紹介の参考にしたいと思っていますので、
よろしければぜひ教えてください^^
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クコさん、
新たな展開が始まりましたね。
あ〜心配、ほーんと心配。
絶対なんかやらかすわ〜。
せんせ〜い!早く良くなって〜😁
クコさん、あなた様がお疲れだったじゃないですか!医者(ではないかもしれませんが)の不養生とはまさにこのことですね〜☺️
元気になって下さいね♪