Yojodo Café — Episode 8
The Summer Wellness Council
その日、養生堂にはお客さんが一人も居なかった。
窓の外では雨上がりの湿った風が揺れている。
「暇だなぁ」
生姜が机に突っ伏した。
「たまにはこういう日もあるよ」
甘草が本を閉じる。
「せっかくだから夏の養生会議をしよう!」
突然、生姜が立ち上がった。
「養生会議?」
桂枝が首を傾げる。
「そう。今年の夏をどう乗り切るか作戦会議!」
「面白そう!」
蘇葉が手を挙げた。
「じゃあ私は風担当!」
「風担当って何なのよ」
厚朴が笑う。
養生堂の机の上には冬瓜、
とうもろこし、
きゅうり、
梅に紫蘇が並んでいる。
「夏はやっぱり汗をかくことが大事だよね」
桂枝が言う。
「でも冷たい物ばっかり飲む人多いよね」
生姜が頬を膨らませた。
「冷たいアイスに冷たいジュース!」
「冷房も強いしね」
蘇葉が窓を開ける。
「だから私は風を通す係なの」
「勝手に係を作りなさんな」
厚朴が呆れた。
みんなが楽しそうに話している。
その時だった。
「みんな暑さの話ばっかりしてるね」
静かな声が聞こえた。
みんなが振り向く。
奥の棚の隅。
紫色の本を抱えた酸棗仁が座っていた。
「いたの?」
生姜が驚く。
「ずっといたよ」
酸棗仁はページをめくった。
「気づかなかった」
「うん、知ってる」
本に視線を落としたまま答える。
みんなが苦笑する。
酸棗仁は本を閉じた。
「でもね」
「夏は暑さだけじゃないよ」
部屋が少し静かになる。
「夏は眠れなくなる人が増える」
「え?」
大棗が顔を上げた。
「暑いから?」
「それもある」
酸棗仁は頷く。
「汗をかくでしょう?」
「うん」
「身体の潤いも一緒に減るんだよ」
窓の外では雨粒が葉の上から落ちていた。
「夜になっても頭の中が静かにならない人」
「やっと眠れても夢ばかり見る人」
「朝起きた時、もう疲れてる人」
「毎年いるよ」
酸棗仁が言い終わるやいなや
大棗が思い出したように言う。
酸棗仁は小さく頷きながら微笑んだ。
「夏はね」
「頑張り屋さんが空っぽになりやすい季節だから」
誰もすぐには返事をしなかった。
蝉はまだ鳴いていない。
けれど夏はもうすぐそこまで来ている。
閉店後。
みんなが寝る準備をしていても、酸棗仁ちゃんは窓辺で本を読んでいた。
夜風がふわりとページを揺らす。
遠くで風鈴が鳴った。
酸棗仁は空を見上げる。
「今年も来るかな」
そして小さく呟いた。
「眠れない人...」
風鈴がもう一度鳴った
第八話 ~完~



何かが起こりそうな予感。
酸棗仁ちゃんは疲労ストレスからくる眠りを改善してくれるんですね。
さんそうにん!
また知らない知識を学ぶことが出来ました。
素人でもこういう世界観で物語を展開してもらえれば自然と頭に残ります。
いつもありがとうございます!
クコさん、初めてコメントさせていただきます✨いつも私の頭の中にはクコさんの物語の世界が広がっていて、もし私が絵本作家だったら…この場面、この表情を描きたいなぁ✨って想像しながら読ませていただいています✨